中小企業診断士&システムエンジニアの日記

システムエンジニアとして企業で働く中小企業診断士が日頃感じたことを綴っていきます。

スマート工場の実現(3)

3.スマート工場事例における自動化実現の取組み内容


 スマート工場実現の一つの方策として、生産ライン・生産工程の自動化がある。自動化を実現することによって、人手作業をなくす・削減することを達成させるものである。「日本の最新スマート工場」記事の中で、自動化実現を目的とした事例について、考察する。

当記事は、日経ものづくりの記事内容より類推して記載しています。各社事例の記載内容は、正しくない可能性がありますので、この点を考慮の上でお読み下さい。



自動化実現のための取組み

 各事例では、自動化を実現するために自動化機器やロボット、自動搬送装置(AGV)などを導入することで、これまで人手に頼ってきた製造工程を自動化することに取組んでいる。また、完全自動化が難しい場合であっても、人と協働して製造に携わる協働ロボットの導入を図ることで、効率化を図っている事例もある。
 表-1に各社の自動化実現に向けた導入事例を記載する。

表-1 自動化実施に向けた導入事例
会社名 導入内容
パナソニック 検査工程に双腕ロボット導入。双腕ロボットと単腕ロボットを組合せて自動化
パナソニック 完成品組立工程に協働ロボット導入
パナソニック はんだペーストや実装部品の状態を画像により認識。各種機器にフィードバック制御
安川電機 複数台の産業用ロボットを接続し自動化セルを構築。自動化セル間にリニア搬送ラインを設置
安川電機 自律型AGVで構内物流の自動化
TDK フェライトコア工程を集約して自動化ライン構築
TDK 手作業で実施してきた作業へロボット導入
UMC・Hエレクトロニクス 人とロボットを比較。導入効果のある工程にロボット導入
UMC・Hエレクトロニクス 工程間の物流にAGV導入
ダイヘン 組立工程に産業用ロボット、工程間物流にAGVを導入し、自動化
OKI 新設ラインに自動化機器を導入。自動化
アマダ 産業用ロボット、AGVによる自動化

 これらの事例は、日本の最新スマート工場として取り上げられたものであり、単に自動化機器を導入して製造工程の自動化を図ったというわけではない。究極の自動化を目指して取組んだものである。
 自動化については、以前の記事で、3段階の自動化があると記載した。3段階とは、
①第1段階:自動化機械・機器の導入による製造工程の自動化
②第2段階:自動化機械・機器の動作開始〜製造〜動作停止の自動化
③第3段階:製造工場全体の自動化
である。
 これら事例では、第2段階、第3段階まで、自動化が進められおり、それ故に、最新スマート工場なのである。各会社によって、業種業態が異なることから、事例そのものの内容は参考にならないかもしれないが、取組み方法などが参考になる。

3段階の自動化内

 事例の内容に対する考察の前に3段階の自動化について説明する。なお、3段階の自動化について、私がこれまでの経験の中で考えてきた内容である点は、留意頂きたい。
 例として、顧客からの注文を受け、材料を加工して、納品するような工場を前提に説明する。

【第1段階】
 人が実施する作業を置き換えることができる機械・機器などを導入して、人手作業をなくすことである。
 例で言えば、従来、道具を持って人手で材料を加工して製品を製造していた作業をロボットや工作機械を導入して、人手作業を止めることである。

【第2段階】
 第1段階の自動化が達成できると人は実際の加工作業は実施しなくてもよくなるが、新たな作業として、機械や機械の作業開始/終了の指示、製造を行うために必要な刃具の交換などの段取作業や製造するための動作内容の設定作業などが発生する。これらの作業を自動化するのが第2段階である。
 実施は、様々な方法となるが、例の工場で言えば、刃具自動取替装置や加工内容を外部から変更するための制御装置を導入し、予め加工する品種に対して、使用する刃具や動作内容を指定しておき、人は製造する品種のみを指定すれば、ロボットや工作機械への設定や指示は自動的に行うというものである。

【第3段階】
 第2段階の自動化が達成できると製造対象の品種などを画面などから入力すると自動的に各機械・機器に製造する内容が伝えられ、製造が開始する。人はどの製品を製造するかを決定するという作業のみになる。  例えば、本日製造予定一覧や指示書などから、製造内容、刃具取替の頻度、顧客の納期などを勘案して、最も効率的に製造できる順番を判断して、製造順番を決定する。この作業を自動化しようとするのが、第3段階である。


 第3段階までの自動化が完了すると人は、機械や機器が問題なく稼働し、計画通り製造できているか監視し、機械や機器、システムが何らかのトラブルで停止しり、動作不良になった場合に対応するという作業のみになる。

 但し、実際には、第1段階の自動化のみにとどまっていることが多いと思われる。


究極の自動化への取組み

 究極の自動化を目指す場合、どのような取組みを行って行うのかについて、事例を通じて検討する。
 以下の表-2に各社が、究極の自動化を目指して、取り組んでいると思われることを示す。

表-2 究極の自動化実施に向けた取組内容
会社名 取組内容
パナソニック 検査工程に導入されたロボットの動作プログラムを検査対象の基板に刻印されたQRコードを読込み、該当プログラムに自動切替
安川電機 ロボット等の機器と機器をつなぎプロセスを統合し自動化セルを構築。ロボット、自動機器、搬送装置の状態をリアルタイムに把握し、統合的に制御
UMC・Hエレクトロニクス 各工程の部品使用状況を把握し、不足する前に自動倉庫に部品供給を指示(AGVへの部品積込みは人手作業)
ダイヘン ロボットのアーム先端部分に加工品の形状などを認識するためのセンサーを設置。センサー情報からロボットの動作内容を自動変更
ダイヘン QRコードを利用して倉庫内の材料の位置情報を把握。AGV、AGFを制御して、材料の入出庫を自動化
アマダ 工作機械・検査装置への材料搬入・製品排出、コンテナ・パレットへの積載・取出し、設備間の搬送は、ロボット・コンベアなどで自動化

 これらの事例では、ロボットや自動化機器を導入して特定の工程や作業を自動化するだけにとどまらず、前後工程を含むた自動化やロボットを導入することで発生する新たな作業をも含め自動化し、完全自動化を目指すものである。


自動化する上での留意点

 例えば、手作業で組立作業を行なっている工程に対して、組立作業のみロボットを導入した場合、自動化が進むと考えられるが、実際には期待していた効果が得られず、逆に非効率になることがある。要因は、2点考えられる。
(1)完全な自動化を実現させるためには物流の自動化も必須であること。
(2)自動化機器は自律的には動作してくれない

(1)自動化実現のための物流自動化

 1点目は工場内の材料・製品の物流の問題である。ロボットは、指定された内容に従って、黙々と間違いを発生させることなく、効率的に組立作業を行うが、当然、組立作業を行うための材料や部品がロボットの手の届く範囲内になければ、組立作業を行うことはできない。よって、ロボットに作業させるために材料や部品を供給することが必要となる。この供給作業を人手作業にすると、なんらかの要因で供給遅れが発生するとロボットは稼働することができず、結局、人手作業で行うのと変わらないということになってしまうかもしれない。

(2)自動化機器を自動動作

 2点目はロボットなど自動化機器は動作指示をしないと動かないということである。ロボットを動作させるためには、各作業を行うためにロボットアームをどのように動作させるかを示したプログラムをロボットの制御装置で動作させる必要がある。このプログラムは、作業を行う単位、例えば組み立てる作業毎に作成し、異なる作業を実施する場合には、プログラムを入れ替えなければならない。当作業が新たな作業として発生するが、この 作業を人手作業にすると、製造対象が変更になった場合に迅速に変更しないとロボットは、止まることになり、生産性が低下する。

 ロボットなどの自動化機器を導入しても、期待していたほどの生産性や省力化を図れないという場合、理由は上記のような可能性がある。

 図-1に自動化を進めるに当たっての考慮点を示す。

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図-1 自動化推進上の考慮点


各事例の取組み内容

 以下にパナソニック安川電機、アマダの各社自動化事例を記載する。3社ともに上記2点の問題に対応している。
 3社に共通するキーワードが、多品種少量生産である。顧客要求に応じ、様々な品種の製品を少量単位で製造することである。多品種少量生産の場合は、上記2点の問題点が顕在化する可能性が高くなる。
 製造品種変更時は、刃具交換やロボット・自動化機器の動作設定などの段取作業が必要になる。同一品種を連続大量に製造する場合、段取時間は全体の製造時間に占める割合は高くないが、多品種少量生産の場合は、段取時間が占める割合が相対的に高くなり、設備の稼働率低下、つまり生産量の低下・売上減少に直結することになる。
 また、多品種少量生産の場合、複数品種を同時並行で製造することになる。明らかに目視で品種の違いを認識できる場合は問題が発生しにくいと考えられるが、見た目だけでは判別しにくいような場合は対象物の確認作業が必要になってくる。当作業を怠って誤認識した状態で製造すると不良品発生などに繋がることになる。
 3社の事例では、上記問題に対応するために、ロボット・AGVなどの自動化機器だけではなく、各自動化機器を管理するための情報システムを導入していると考えられる。具体的には自動化機器の動作状態把握、製造中製品の位置把握、加えて自動化機器への動作指示を実施することで、人手作業をなくし、人手作業による遅延や誤作業を防止している。

パナソニック:QRコードで自動認識

 パナソニックは、法人顧客が多く、顧客毎に対応するマスカスタマゼーションの方式の製造であり、一品一様の製造になる。このような中で、検査工程にロボットを導入すると異なる製品毎にロボットの検査業務用プログラムを入れ替えなければならなくなる。一品一様の度合が高ければ、プログラムを入れ替えるために人を常時配置しなければならなくなる。これでは、ロボットを導入した効果が得られない。
 パナソニックの場合は、検査対象の基板にQRコードを刻印し、QRコードを読み込むことで、基板の種類や内容を認識させ、自動的に基板に対応したプログラムに入替る方式にしている。これであれば、人がいなくてもロボットは自らプログラムを入れ替えて、連続して検査ができることになる。
 図-2にQRコードで自動認識する方法についてのイメージを示す。

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図-2 QRコードによる自動認識


安川電機:自動化システム構築

 安川電機パナソニックと同様に1ロット最少1個生産という多品種少量生産であり、手作業で実施すると材料の供給やロボットへの動作指示などの段取りのための作業が多くなり、生産性が下がることになる。そのため、徹底した自動化のための取組みが実施されている。
 具体的には、作業工程を分割し、それぞれの工程にロボットを導入し、複数の作業セルを構築。作業セル間は、リニア搬送ラインで結合し、作業中ワークを積載したパレットを自動搬送する。ロボットは、作業に対応する治具を自動的に持ち替え、対象の作業を実施する。また、AGVを導入して、必要となる部材の倉庫からの搬出、工場への供給、空箱の回収などの作業を自動化している。
 しかしながら、実際にはロボット・AGVなどを導入しただけては自動化はできない。各機器に対して、動作指示を自動的に出力する仕組みが必要となり、工場全体を統括管理しているコンピュータシステムが存在していると考えられる。では、当システムで何が行われているのか?想像するに以下の内容と考えられる。
①ロボットやAGVなどの各自動化機器の動作状況や存在位置を収集
②生産計画に従って、ロボットやAGVなどの各自動化機器に動作指示を順次出力
①②を繰返し実施し、工場内の機器と製造物を追跡し、機器の作業が完了すると、製造計画に従って、次の作業指示を各機器に出力し、自動的に製造継続を実施している。
 図-3に安川電機の自動化システムのイメージを示す。

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図-3 自動化システム内容


アマダ:ロボット活用による自動化

 アマダも、10万種を超える多種多様な金型部品の製造を行っており、パナソニック安川電機と同様に多品種少量生産である。そのため、自動化に取組んでいる。
 工作機械(36台)、産業用ロボット(45台)、AGV(3台)、自動倉庫(4台)を導入し、各機器への部材・加工対象物の投入・搬出、設備間の搬送は、ロボット・ローラコンベアなどで接続され、すべて自動化されている。当事例も、詳細はないが、安川電機と同様に工場全体を統括するコンピュータシステムが導入され、究極の自動化が実現されていると想定される。
 当事例で特徴的なのが、素材から荒加工するために使用する工作機械の工具取替作業にロボットを活用しているところである。最近の工作機械には、自動工具取替装置が装備されており、工具の自動取替が可能である。アマダの場合は、荒加工時の工具摩耗が激しく、30分毎に交換しなければならない。従来であれば、人手作業で交換していたが、ロボットに置き換えることで、人手作業をなくし、工作機械の連続運転を可能にしている。
 ロボットで交換させるために工夫している。工具取替時は、微妙な力加減が必要であり、ロボットで実施させるためにロボットアームの先端に力覚センサーを取付け、センサー値から力加減を制御し、交換作業の自動化を実現している。
 図-4にアマダのロボットを活用した自動化のイメージを示す。

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図-4 ロボットを活用した自動化


自動化実現後の人手作業

 究極の自動化が実現されると人の作業はどうなるのか?
 自動化の実現で、工場の生産は人が介在しなくても進んで行くので、人が担うのは、生産状況の進捗管理や自動化の範囲外にある作業、異常発生時の対応などになる。
 例えば、異常発生時の対応は、単純に言えば、工場の生産設備で発生した異常を早期に発見し、異常状態を解消して、正常な生産に戻すことである。但し、迅速に異常発生を発見するためには、工場内に人を配置しなければならず、せっかく自動化で作業者を減らしても異常発生を監視する人を配置しなければならないことになる。この点についても、事例によると効率に実施できるような取組みを行っている。

安川電機:センサーでの情報収集と集中監視

 工場内の様々な生産設備にセンサーを取付け、情報をリアルタイムに収集し、合わせて設備の異常信号なども収集。収集された情報は、統合司令室に設置された8台の大型モニターに、各種生産設備の稼働データや生産実績、工場レイアウト図表示の該当箇所に異常状態情報として表示される。
 人は、通常、統合司令室内で、モニターに表示される情報から生産状況を監視しているが、異常発生が通知されると、モニターに表示された異常箇所を確認し、現場に出向き、迅速に異常対応を実施する。以上の取組みにより、異常対応作業においても、効率化が図れ最少の要員で実現できている。
 図-5に安川電機のセンサーでの情報収集と集中監視についてのイメージを示す。

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図-5 センサーでの情報収集と集中監視


アマダ:スマートフォン活用による情報通知

-  アマダも同様に、設備の稼働情報や生産実績、設備の異常情報を収集し、作業者がいつでも確認できるようにしている。安川電機が作業者が待機する統合司令室内の大型モニターで情報提供するのに対して、アマダでは各作業者が持つスマートフォンで確認するようにしている。
 具体的には、主要な設備やPLCの情報は、汎用ネットワークやPLC専用ネットワークを介して、サーバーに集められ、一元管理される。一元化された情報の中には、設備の情報だけではなく、ワークの位置や加工情報も含まれる。一元管理された情報は、稼働状況・負荷状況・品質情報・生産進捗情報として、スマートフォンから確認でき、異常が発生した場合には、通知が行われ迅速に対応するのとができるようになっている。
 図-6にアマダのスマートフォン活用による情報通知についてのイメージを示す。

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図-6 スマートフォン活用による情報通知


自動化実現の効果

 究極の自動化実現の例として、安川電機とアマダの事例を取り上げてきた。両社に共通するのは、実現に向けて
①人手作業をなくす、製造作業を効率するための自動化機器の導入
②各機器をネットワークなどで接続し、機器の状況収集と機器への動作指示ができる仕組みを構築
③工場全体の状況把握と製造計画に基づいて各機器に作業指示ができる仕組みの構築

に取組み、人手に頼らない自動化を実現させている。
 実現により作業者の削減や効率化を達成している。但し、作業者を減らしたことによって、工場の生産状況の把握が疎かにになり、異常な生産状況になったことへの対応が遅れたり、設備トラブルに迅速に対応できないことが発生しないように、
④設備の稼働状況や生産状況、異常の発生を作業者がリアルタイムで把握できる仕組みを導入している。
 また、詳細には記載されていないが、収集した各種情報は、工場の抱える課題や問題への対応のための情報として活用され、さらなる工場の高度化にフィードバックされていると考えられる。
 実際の効果は、安川電機もアマダも作業者数を3分の1まで減らすことが実現できている。
 両社の導入効果を表-3に示す。

表-3 安川電機・アマダの導入効果
会社名 導入効果
安川電機 生産タクトタイム:3分の1(90秒→30秒)、製造リードタイム:6分の1(1週間→1日)、作業者数:3分の1(300人→100人)
アマダ 直接作業者:3分の1、生産能力:1.5倍、1人当たり生産高:4倍


まとめ

 以上に自動化の実現について記載してきた。自動化を実施していくためには、以下の点を留意する必要があると考えられる。

  • 工場の完全自動化を目指すには、単に自動化機器やロボットを導入して製造工程を自動化するだけではなく、工場全体の自動化を図るための取組みが必要である。
  • 工場全体の自動化を図るためには、製造工程の自動化だけではなく、原材料の供給や製品の搬出など物流の自動化も必須である。
  • 自動化機器やロボットは、製造対象に合わせて、自律的に動作してくれない。動作指示や動作内容を製造対象に合わせて変更させる仕組みが必要である。
  • 自動化実現後の人の作業は、製造作業ではなく、自動化機器の製造状況の監視作業になる。製造設備や自動化機器に異常が発生し、製造が停止した場合に迅速に復旧させることが役割になり、新しいスキルや知識が必要になる。
  • 多品種少量生産の場合は、品質の変更に伴う設備の動作変更に多くの時間が必要となる。自動化すると省力化や製造時間の短縮など効果が大きくなる。

 次の記事では、自動化ではなく、人手作業の効率化について、記載する。

次の記事は、スマート工場の実現(4)スマート工場事例における人手作業効率化の取組み内容